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医療はまさにホスピタリティの原点。接遇のプロを育てるスペシャリスト。

Profile

和田

(リゾートトラスト(株)出向中) クオリティマネジメント部 部長代行
((株)ハイメディック出向中) クオリティマネジメント部 部長代行

※所属・インタビュー内容は、2019年7月時点のものです

人の心に響かせ、何かを伝える。そんな仕事に手応えを感じていた。

和田のキャリアは、一貫して「接遇」である。まず、大学卒業後に最初に勤めた国内大手航空会社では客室乗務員を。お客様のお気持ちへの寄り添い方、声の出し方、立ち居ふるまい、そういった接遇の基礎を学び身に着けたのはこの時代だ。お客様に気持ちよく過ごしていただくための丁寧な接客はもちろんだが、和田がもう一つ手ごたえを感じていたのは、実は機内販売だった。「そこには口ではうまく説明できないノウハウがある」と和田は語る。ただ強く押すだけではかえって成果は上がらない。お客様の特性を見極め、どういう物を求め、どういうアプローチが心に響くのかを瞬時に判断し、個々の気持ちに沿いながら商品をご紹介する。するとそのやりとりを楽しみながら、お客様は欲しい商品と出会い、購入し、「楽しかった、ありがとう」という言葉までかけてくれたのだという。往復分の商品を往路だけで完売したこともあった。こちらの事情を押し付ける販売ではなく、心を察知しそこに沿ったご紹介をすることで、お客様は喜んでくださる。そんな接遇の醍醐味を、この頃から和田は味わっていた。

その後、フランスのバッグブランドや、インターナショナルジュエリーブランドで販売職を経験したが、どこへ行っても、和田はトップクラスの販売成績を記録した。共通して心がけていたのは、目の前のそのお客様のお気持ちとニーズに沿いながらご紹介、ご提案することだ。「販売」というより、「接遇」という言葉に近いアプローチが「和田流」であった。

「ホスピタリティ」と「ホスピタル」は同じ言葉が語源。
寄り添う接遇の大切さを痛感。

そんな中、和田は次のキャリアとしてAMCに入社することになる。最初に配属されたのは、東京ミッドタウンクリニックでエグゼクティブ医療サービスを提供する特別診察室であった。医療にもサービスの質にも最上を求める患者様をエスコートするコンシェルジュのポジションだ。航空会社やラグジュアリー商材での接遇経験をもつ和田の経験を踏まえての配属であった。個々の患者様、会員様の心を汲み取り、寄り添う和田の接遇経験は入社当時から活かされ、会員様から検診とは無関係のお悩みのお電話を名指しでいただくほど、信頼関係が築かれていった。しかし、誰にも気づかれないながらも、和田自身は心の中で戸惑いを感じていた。これまでの業界での、喜びを求めていらっしゃるお客様への接遇と、健康への不安を抱えていらっしゃるお客様への接遇は、当然ながら異なる。マニュアルそのままではなく、「心に沿う」接遇をモットーとする和田だからこそ、これまで経験してきた沿い方ではいけない、と感じたのだ。

ある時、忘れられないことが起きた。エスコートについた女性の患者様に乳がんが発見され、ご自身のこれからのこと、家族のことを思い、泣き崩れ、立ち上がることもできなくなってしまった。こんな場面で、どうすれば「心に沿う」ことができるのか、和田にはわからなかった。励まし、抱き合いながら、和田はいつのまにか一緒に泣いていた。この場面で「泣く」ことが接遇のプロとして正しいのかというと、いろんな見方があるだろう。けれど、同じ思いになることを止められなかった。そして立ち上がれなかった患者様は和田の励ましで、残りの検査もすべて受診された。そして、紹介先の病院で乳がんの治療を受け、お元気になられたときに、その方から和田に贈り物が届いた。それは、和田の名前の入った美しいボールペンだった。和田はそれを今もお守りのように大事に持っている。

「ホスピタル」と「ホスピタリティ」は、どちらもhospicsという「者を守り、思いやる」という意味をもつラテン語が語源になっているという。患者様の思いをくみとり、自分事のように共有する和田流の接遇は、医療業界でなおいっそう発揮されることになっていった。そしてそのスキルを評価された和田は現在、親会社にあたるリゾートトラスト(株)のメディカル本部 クオリティマネジメント部の所属となり、東京ミッドタウンクリニックを含む、グループ内の全医療施設のコンシェルジュ、医療スタッフ、コールセンタースタッフの接遇トレーニングを行っている。

「女性の活躍」という言葉に違和感を覚えるくらい、女性が輝ける職場。

昨今益々叫ばれている「女性の社会での活躍」。しかし、一般的に女性が得意とされる気遣いや心配りは当たり前のように求められる職種だからこそ、むしろ和田はこの言葉に違和感を覚えるという。「自分自身はすばらしい接遇力を持つ男性スタッフにも出会ってきたし、そういう方に育てられてきた。男性だから、女性だからということは本来ないはず。その方がどういう気持ちでお客様と接しているか、大事なのはそこだけだと思います。」

息抜きは、同じ価値観を持つ社外の友人との会話だと話す和田。接遇職の友人が多いという。本音を語ったり共感したりという時間がストレス発散にも励ましにもなっているというが、そんな時でさえ姿勢や所作を正しく保つことは忘れないという。「接遇には、生き方が出ると思うんです。オフの時でも、電車内などで脚が乱れていたり、場所をわきまえずにメイクをしたりということを許してしまうと、そういう姿勢がオンの時にも表れてしまうような気がするんですよね。」

実際に職場でも、髪型やメイク、服装が乱れた和田を見かけたことがない。患者様の前でプロフェッショナルでありたい和田の魂は、熱のこもったトレーニングで各施設に浸透していっている。


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