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経営危機を乗り越えた『会員制医療』の強さ


アドバンスト・メディカル・ケアを含む私たちのメディカル事業は堅調な業績を維持していますが、東京ミッドタウンクリニック開業後に、大きな危機にみまわれたことがあります。

東京ミッドタウンクリニックには、最新の3.0テスラMRI(磁気共鳴画像装置)が設置されています。もともとは、中古の1.5テスラMRIが設置されていたのですが、経営判断として入れ替えました。この入れ替えコストは、MRI機器本体と解体、内装工事でおよそ3億円かかりました。

私がまだ東京ミッドタウンクリニックの開業支援に携わる前に、他の施設で使用していた1.5テスラMRIが、数千万かけて設置されていました。もし私が最初から判断していたら、経営的にリスクのある中古のMRIを設置するような後先を考えないことはしません。その後、新しいMRIへの入れ替えが必要になること、中古のMRI設置にともなう負担や損失の方が、先々非常に大きいことが明らかだからです。

その後、私が東京ミッドタウンクリニックのマネジメントを担うようになってから、結局、このMRIの入れ替えが避けられない状況になりました。

東京ミッドタウンクリニックは、アメリカ有数の医療機関であるジョンズ・ホプキンス・メディスンとの国際提携を実現させ、2007年にオープンしています。六本木には、外国人ビジネスマンも多く、こうしたお客様からは欧米と同じ医療水準を求められますし、オフィスワーカーや二次検査を必要としている方からもニーズがありますから、病気を発見する高精度なMRIは、東京ミッドタウンクリニックに必要不可欠です。

新しいMRIへの入れ替えのために、100トンクレーン車を導入し、東京ミッドタウンと檜町公園をつなぐ道路の片側車線を封鎖しました。TMCのフロアである6階までMRIをクレーン車で釣りあげ、現在の位置へと運搬。設置エリアにある部屋は、搬入前にすべて解体工事を行い、搬入後に復旧工事をしました。

また、MRIは磁場を発生させるため、磁気を漏らさないよう専用シールドを張るなど、東京ミッドタウンという商業施設の安全も十分確保し、周囲とも配慮や調整を徹底しました。約3億円という金銭的なロスだけではなく、入れ替えに伴う大規模な工事等のために、長い時間を要しました。

工事のために診療も制限せざるを得ません。本来入ってくるはずの収入を億単位で失い、そこに数億円もの支払いが生じる。このような感覚です。経営的には大打撃です。この窮地をどう切り抜けたのでしょうか?

私は、東京ミッドタウンクリニックに会員制の医療サービスであるハイメディックを新設しました。現在の「ハイメディック・ミッドタウンコース」です。もちろん、市場を正確に見極めてのことです。東京ミッドタウンクリニックとの相乗効果でハイメディックの価値を引き上げ、損失もカバーする、という経営判断でした。ハイメディックは、高額な会員権ですから、非常に収益性の高い事業であり、損失の補填を可能にします。

ただし、東京には既に「ハイメディック東大病院コース」をスタートさせていましたので、大学病院にはない、ハイメディックミッドタウンならではの「魅力づけ」が必要でした。

東京ミッドタウンクリニックは、六本木の東京ミッドタウンというロケーションだけではなく、歯科、美容皮膚科などを揃え、大学病院にも引けをとらない高精度な医療設備も備えています。ハイメディックの高品質な検診に、こうした「魅力」を組み合わせて販売したところ、1500口の高額会員権は、瞬く間に完売し、無事にMRI入れ替えによる損失も補填することができました。

また、このノウハウや経験は、後に続くハイメディック東京ベイ、ハイメディック東京日本橋のオープンへとつながっていきます。背景にあったのは、莫大なコストがかるMRIの入れ替えに伴う経営的な危機でしたが、結果として、ハイメディックミッドタウンは大成功をおさめました。

「であるならばハイメディックのコースをたくさんつくればいいのではないか?」と思うかもしれません。実際にお客様からも「ハイメディックをもっとつくってほしい」というお声もいただきます。九州や東北で検討したこともありましたが、見送りました。会員権販売のためには、市場性の高さを熟慮しないといけませんし、医療職など十分な人材確保が必要です。収益性が高いからといっても、ハイメディックが誇るサービスがご提供できない限り、安易にオープンすべきではありません。

ハイメディックには、これまで培ってきた信頼と高い品質があり、経営危機をも乗り越える「強さ」をつくってきたからです。会員制医療の強みを最大限発揮して、経営的な窮地を乗り越えたことは私たちの大きな財産となり、現在も会員制医療が事業の核として成長しているのです。

※メッセージ内容は、2023年8月時点のものです


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