認知症に希望の光プラズマローゲン
専門家の声
Vol.03
将来の認知症を抑えるために、今できること
脳梗塞や脳出血が原因で起こる脳血管性認知症をご存知でしょうか。認知症ではアルツハイマー型に次ぐ症例数の報告がされています。今回は、循環器内科がご専門の田口淳一先生にお話しを伺いました。
東京ミッドタウンクリニック院長
総合内科専門医 田口 淳一 先生
認知症原因の第2位は、『血管性認知症』
高血圧症の治療は約3/4の人が不完全!?
いまメディアなどでも認知症の特集がよく組まれています。みなさんの認知症の関心が高いことが伺えますね。認知症を医学的に分類すると、その半分が脳の動脈硬化(脳梗塞)や小さい脳血管障害の積み重ねが原因で起こる血管性認知症といわれています。予防を考えるのであれば、アルツハイマー型だけを気にしていてもだめです。そして、脳血管性認知症に一番関連性が高いのが生活習慣病のひとつ、高血圧症です。
血圧が140—90程度の方で認知症予防に関する認識のない人は、「働いていて緊張しているからこんなものだろう」と思っていて、医師が薬を始めましょうとか、薬の量を増やしましょうと提案しても、薬は飲みたくないとか増やしたくないという人が多いです。そういった方が40代から70代まで過ごしてしまうと、小さい動脈硬化が重なって、脳梗塞ではないけれど、ダメージを受けた状況が続き、結果的に動脈硬化が蓄積されて認知症が引き起こされます。高血圧症の治療に関する以前のデータでは、適切な治療の域に達している人が25%程度で、75%にも及ぶ人が治療不完全と報告されています。この75%の人の治療を完全なところまで引き上げると認知症患者はかなり減少するといわれています。
数値が改善しない場合は、薬の服用を。先を見据えて、自分でコントロール
高血圧症の方の食事ですが、一日塩分量の目安は6gです。日本人の平均が12gと言われているので、約半分です。悪玉コレステロールの高い人は、食物繊維を多く摂取して悪玉コレステロールを減らし、血糖値をコントロールすることも大切になります。また、生活に運動を取り入れて、体重を適正に保っていきましょう。3ヶ月頑張ってみて、それでも改善しなければ、遺伝的な要因が強い可能性が考えられます。
病気と遺伝の関係性は現在研究中で、脳血管の病気には遺伝的な要因もあるだろうと考えられていますが、日進月歩で結果が変わります。だから最終的なデータが出るのはまだ先の話です。遺伝子は生物が何十億年とかけて積み上げてきたものですから、すぐには分かりません。ただ、遺伝だけで病気が決定するわけではありません。遺伝的要素があったとしても、同じ条件で、生活習慣が良い人と悪い人であれば、良い人の方が病気にかかりにくいことは容易に想像できますよね。遺伝的要因を変えることはできませんが、環境要因は変えることができます。 環境要因となる生活習慣を変えることは、なかなか難しいことではありますが、いずれの理由にしても、数値が下がらない方には、「自分の頭を守るために血圧の薬を飲みましょう」と話しています。「薬を飲んだらやめられない」という悪い言葉が流布してしまっていますが、私も高血圧の薬を飲んでいます。目の前のことではなく、先のことを考えて数値をコントロールしていきましょう。
認知症を起こす病気(グラフ)と血管性認知症の原因
血管性認知症は、「血管性」の文字通り、老化や生活習慣病を背景に血管の壁がもろくなった結果、詰まって梗塞を起こしたり、破れて出血を起こしたりして、認知機能が悪くなる病気です。
病気の先手を打つことが、最も現実的で有効な対策
サプリメントを予防に取り入れる
予防という観点では、サプリメントも検討できるでしょう。最近では、プラズマローゲンに関する研究結果がでてきていますので、試される方も増えてきたようです。経済的にゆとりがあれば、採血でプラズマローゲンが下がっていたら補充するというやり方を検討できるでしょう。プラズマローゲンがアルツハイマー型の予防だとすると、動脈硬化(血管性認知症)の予防はDHAやEPAが有効でしょう。これらのサプリメントは、健康を著しく害するような副作用はほとんどありません。両方併用でもよいのかもしれませんね。両方飲みますか?と医師に聞いたら、大抵の医師は両方飲むだろうと思います。
病気を見つけてからでは遅い!リスクコントロールと早期発見のために今すべきこと
現在の認知症は、専門医は神経内科が基本です。ある程度、症状が進んだ状態で、医療者が介入しても元に戻しにくい方が対象です。今、いわれ始めたのは、もっと前の段階、つまり、症状が出る前にケアした方が本人も家族も幸福になれるということ。つまり、症状を見つけてからでは遅いだろう、ということです。
現状の認知症テストでは、ある程度症状が進行してからでないと結果がでません。それに、能力に個人差があるので、難しい試験になると、認知症でない人もひっかかってしまう場合があってそれも困る。プレッシャーで認知症と自覚してしまうケースもありますから、もっと先に脳の変化が始まりだしたかどうかを見る。その時点でなにかを介入させるのが、現実的な策であると思います。 だからこそ健康診断や人間ドックの意味を理解してもらうよう、広めていかないといけないと思っています。
認知症の原因になるものは、血圧、コレステロール、糖尿、尿酸などですが、これらを早い段階から上手にコントロールしていくことで、大きな病気になるリスクを低下させることができます。当院(ミッドタウンクリニック)では、できるだけ先のリスクも見越した上で患者さんに治療の提案をしています。動脈硬化を考えると、リスク要因を全部コントロールすればいいじゃないかと提案しています。心臓や腎臓の病気もリスク要因は同じで、血圧、コレステロール、糖尿や尿酸もまとめて、コントロールしていけば様々な病気のリスクを下げることにつながります。会社の経営にも似ているかもしれませんね。我々は、先手を打ってリスクを全部コントロールしていくのが現実的な策だと考えています。
最近の診断に使われる医療機器にはめざましい発展があります。アミロイドイメージングという方法では、放射性薬剤を体内に入れて、PET(ペット)で脳を撮影することによって、アルツハイマー型認知症の原因と考えられている物質(アミロイド)が脳に溜まっているか調べることができるようになってきています。また、機能MRI(fMRI)という方法では、神経細胞が活動するときに脳の酸素が消費されることに注目して、血流動態反応を視覚化することができるため、認知症診断への応用が進められています。将来的にこの分野はもっと進歩すると考えられています。リスクコントロールと早期発見のために、健康診断や人間ドックを上手に活用して、健康寿命を伸ばしていきましょう。
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