認知症に希望の光プラズマローゲン
専門家の声
Vol.02
脳疲労の解消が健康回復の鍵
「脳の健康vol.1」で藤野武彦先生にお話しいただいた特集「認知症要因の真髄に迫る!」に驚くほどの大反響がありました。 認知症については、最近ではテレビ番組等でも取り上げられるなど、現代社会においてもっとも関心の高い病気のひとつです。今号では、創刊号に寄せられた質問や疑問を中心に、循環器内科医として幅広く患者さんの悩みに向き合ってこられた藤野武彦先生に再びお話を伺いました。
左:九州大学名誉教授 藤野武彦先生
九州大学医学部卒業以来、九州大学医学部第一内科において、内科とくに心臓・血管系と脳との関連を研究。九州大学健康科学センターが開設されたのを契機に、「健康科学」という新しいサイエンスに挑戦。1991年に「脳疲労」概念を提唱。
右:管理栄養士 天沼夏子
株式会社アドバンスト・メディカル・ケア所属東京ミッドタウンクリニック内では、栄養相談専門士として栄養カウンセリングを担当。毎月約300件のサプリメント選定をおこなう。
物忘れと認知症はどう違う?
- 天沼
- 加齢による物忘れと認知症とでは、異なる特徴があるのですね。それでは、そのような状況下にあるとき、脳の中ではどのようなことが起こっているのですか?
- 藤野先生
- 筋肉が疲労するのと同じように、物忘れは脳が疲れている状態といえます。ストレス過剰の状態が続くと、脳内での情報処理・伝達が十分にできなくなります。この状態を私は「脳疲労」と呼んでいます。 脳疲労は、まず五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の異常として現れてきます。たとえば、味覚が鈍麻な状態になると、小さじ一杯で甘みを感じていたのに大さじにしないと甘みを感じられなくなります。たくさんの量をとらないと満足しないので、過食に結びつきやすいといえます。動脈硬化、高血圧などの生活習慣病は、こうした要因で発症すると推測できます。一方、脳疲労が心の異常として現れると、認知異常から精神的行動異常に発展し、最終的にうつ病や神経症などの発症につながっていきます。
ヒトの脳の仕組みを家族にたとえるとわかりやすいでしょう。知的中枢として多くの情報を分析し指令するなどの、脳の合理的な役割を果たす大脳新皮質が父親(夫)とすると、本能や情動という生命の基本を維持する大脳旧皮質が母親(妻)、そして、自律神経の中枢である間脳が子どもとたとえることができます。夫婦仲が悪い家庭ではその影響を子どもが受けるように、大脳新皮質と旧皮質のバランスが崩れる(脳内の夫婦仲が悪くなる)と自律神経の均衡も崩れて(脳内の子どもがおかしくなって)、その結果、さまざまな症状が現れます。
脳疲労の典型的な初期症状としては、睡眠障害、便秘、食事がおいしく感じられない—この、3つの症状が現れてきます。古来から快眠、快便、快食が健康の秘訣といわれていますよね。これができなくなったら脳疲労の初期症状と考えてください。
- 天沼
- 睡眠・便通・食事は、身体も脳も健康に保つためにはやはり大切ですね。私も毎日の栄養相談の中で、特に睡眠についてなんらかの問題を抱えていらっしゃる方が多いという印象を持っています。では、脳疲労はどの段階で対策を行うことが有効なのでしょうか。
- 藤野先生
- 睡眠障害が起こったときに「脳疲労」対策を講じれば認知症にはならないと考えてもいいほど、実は認知症は睡眠障害と密接な関係があります。物忘れはその後に出てくる症状です。睡眠障害にも寝つきが悪い、中途覚醒する、朝早くから目が覚める、この3つのパターンがありますが、特に中途覚醒は非常に重要な「脳疲労」のサインです。これが起こったときには、ぜひ、睡眠障害対策を行ってください。その具体的な対策は、まずその症状を鏡として、自分は疲れているということを認識することです。思い当たる原因を変えようとするのではなく、自分の状況を認めてあげるだけでも症状は快方に向かいます。それでも改善しない場合は恐れずに、内科、心療内科を受診してください。
次に便秘ですが、便秘は腸の病気と思っている方が多いのですが、実は「脳疲労」が起こったときにすぐに起きる症状です。間脳(自律神経中枢)は首から下の臓器を支配しているのですが、その間脳が狂うと心臓のリズム、呼吸、肝臓、膵臓の働き、そして胃腸の働きも、みんなバランスを失ってしまいます。ですから、便秘になったときは脳疲労と考えていいといえるでしょう。
身内が認知症に!私は大丈夫?
- 天沼
- 脳の疲れが認知症のみならず体の不調にも関係するとのことですが、「(親など身内が認知症だから)自分もきっと認知症になるのではないか」とつい気に病んでしまう方もいらっしゃいます。効果的な予防法はあるのでしょうか。
- 藤野先生
- 私は、認知症は「脳疲労」から起こってくるという仮説を持っていますが、その「脳疲労」とはプラズマローゲンの減少そのものという見方をしています。プラズマローゲンは薬ではなく、ヒトをはじめ動物の脳内などに存在するリン脂質の一種で、情報伝達にも大きく関わっています。私どもの研究でもこのプラズマローゲンの欠乏とアルツハイマー型認知症の発症の間には強い相関関係が見出されています。体内のプラズマローゲンを増やすようにすることで、健康効果が期待できます。
- 天沼
- プラズマローゲンを増やすようにするには、どうすればよいのでしょうか。
- 藤野先生
- 忙しくて「脳疲労」状態が続いている人は補強としてサプリメントを通じてプラズマローゲンをとることはいいでしょう。ただ、まずは「脳疲労」を引き起こす習慣を改めることが本質です。「脳疲労」によってプラズマローゲンは減少しますが、「脳疲労」が回復すればプラズマローゲンは増えていきます。プラズマローゲンを増やすには、自分の好きなことで健康的によいことをすればよいのです。美しい景色、心地よい音楽や香り、美味しい食事、優しい感触——気持ちがいいという感覚がプラズマローゲンを増やします。現代人の多くが認知症の不安を持っていますが、不安こそ「脳疲労」の最大の原因です。そうした不安を解消できれば、「脳疲労」も解消され元気になれるでしょう。
- 天沼
- 最後に、未病の視点から「脳疲労」を防ぐ生活習慣を目指すとしたら、どのような生活を心がければよいでしょうか。積極的に取り入れるべき食事や運動など、藤野先生おすすめの健康法がありましたら教えてください。
- 藤野先生
- 実は私はこのようにやるべきという強制や指導を行う健康法はお勧めしていません。海外の医学論文には熱心な生活指導は一時的には効果が出たが、長期にわたると、何もしなかった人たちよりもむしろ健康状態を悪化させたという実に興味深い論文があります(笑)。健康法はたくさんありますが、その取り入れ方がなによりも重要です。私は、ストレスによる「脳疲労」を解消していくことで心と身体が息を吹き返し、のびやかに機能し始める健康法を提唱しています。まず「自分が自分を禁止・抑制することをできるだけしないで、自分にとって心地よいことをひとつでもいいから始めること」が基本原則。栄養が豊富だからトマトを食べるのではなく、トマトが好きだから食べる。健康に良いから運動するのではなく、体を動かすと気持ちが良いので運動する—この発想が脳にとっても身体にとっても、とても大切でもっとも重要なことなのです。ぜひ実践してみてください。
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単なる物忘れは、脳の老化によって記憶力や思考力が低下していく自然な現象で、日常生活に問題はありませんが、認知症は日常生活にさまざまな支障をきたします。「もしかしたら認知症かも……」と不安になられた患者さんが多く受診されますが、ほとんどは健忘症です。軽度認知障害というのは、単なる物忘れともいえない状態で、軽い短期記憶障害があったり、仕事や家事の段取りが速やかにできなくなったりしますが、本人が自覚しています。また日常生活に支障がありません。