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研究発表

研究発表


第18回日本性差医学・医療学会学術集会において、モーニングセミナーを行いました。

2025年1月12日~13日、熊本県市民会館シアーズホーム夢ルームにて、第18回日本性差医学・医療学会学術集会が開催されました。

アドバンスト・メディカル・ケア協賛のもと、吉形先生が「女性のエイジングと腟マイクロバイオームの変化」をテーマにモーニングセミナーを行いました。

マイクロバイオーム研究の背景とエクオール

腸内細菌は食物を代謝し、ポストバイオティクスを産生します。大豆イソフラボンポストバイオティクスである「エクオール」は骨や脂質代謝に影響し乳がんや前立腺がんのリスク低減など幅広い健康メリットが示されています。
 
【自験例】
閉経後女性の腸内細菌叢を分析したところ、97%とほぼすべての方の腸内にエクオール産生菌が存在しましたが、実際にエクオールが産生できる人は22%ほどでした。エクオール産生能に対する影響因子として最も強い関連を認めたのが、腸内細菌の多様性でした。


関連リンク
 第33回日本女性医学学会学術集会にて、「エクオール産生能と腸内細菌叢および、食習慣、生活習慣関連因子についての検討」を発表


腟マイクロバイオームの特性

腟内環境は乳酸菌の一種である「ラクトバチルス」が主に支配しており、腟内を酸性に保ち自浄作用を有します。マイクロバイオームはラクトバチルス単一性が高いほど良好とされます。閉経後はエストロゲンの減少により腟粘膜が変化し、ラクトバチルスも減少。腟内マイクロバイオームの多様性が高まり、酸性環境が失われます。
 
【自験例】
腟マイクロバイオームの遺伝子検査では未閉経例のラクトバチルス主体例が約65%であるのに対し、閉経例では約5%と減少していることが確認されました。一方で病原菌や雑菌の増加を認めました。


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第21回日本抗加齢医学会総会にて、「腟マイクロバイオームのエイジングによる変化と 乳酸菌含有素材のデリケートゾーンケアによる改善効果の検討」を発表

腸内と腟内マイクロバイオームの関係性

同一個体の腸内細菌叢と腟内細菌叢を同時に遺伝子解析した結果、腟内のラクトバチルスと腸内のラクトバチルスが複数一致していることが確認されました。またラクトバチルスの割合が低下している閉経例では腸内と腟内でより多くの雑菌の相関性を認めました。これらの結果から、腸と腟の間で微生物が “行き来”しあっている可能性が示されました。
また、エクオール産生能と腟内環境の関係を分析したところ、未閉経例ではエクオール産生レベルが高い方ほど腟内のラクトバチルス比率が高いという、正の相関が見られました。一方で、閉経後の人ではラクトバチルスがほとんど存在しないためこの相関はみられませんでした。しかし、エクオール産生能に影響する腸内細菌の多様性が腟内環境に間接的に影響を与えている可能性が考えられます。
 
今後に期待したいこと
こうした“腸と腟のクロストーク”の概念からも、腸内細菌を整えるプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など)を経口摂取することが、腟の環境改善にも寄与する可能性があります。また経腟プロバイオティクスが、直接的に腟内環境を改善する作用を示す研究もみられます。WHOもプロバイオティクスが健康上のメリットを有すると提言しており、婦人科領域でも、たとえば再発性の膀胱炎や腟炎に対して“抗菌薬ではなく、プロバイオティクスを活用して微生物叢のバランスを整える”という方法が検討されています。ただし、まだ研究段階のものも多く、日本のガイドラインでは十分に確立されていないのが現状です。
さらに、閉経後の女性に対するGSM治療では、日本では経腟用エストロゲン製剤が1種類しか保険適用になっておらず、欧米ほど選択肢がありません。そのため非ホルモン療法としてのフェムケア商品や、腟や外陰部へ直接ラクトバチルスを届けるジェルなどを併用する方法が注目されています。
 
 
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 第15回抗加齢ウィメンズヘルス研究会において、女性のエイジングとマイクロバイオームの変化 -腟内・腸内細菌叢のクロストークから見た女性ヘルスケアの展望-について発表


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